早期胃癌の内視鏡的治療について

講師:おおたかの森病院 消化器・肝臓内科 安達 哲史 医師

「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」認定施設

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、内視鏡を使って高周波メスで粘膜を切開して、粘膜の下層を剥離することで癌を切除する技術です。 ESDは2006年に胃癌、2008年に食道癌、2011年に大腸癌に対して保険適用となった比較的新しい治療です。現在ESDは広く普及しており、 一定水準を満たした施設であれば、安全に受けられる手術となりました。 この一定水準とは、厚生省から「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術認定施設」の認定を受けている施設であることです。 認定を受けるには、消化管内視鏡手術について5年以上の経験を有する常勤医が3名以上勤務していること、早期胃癌、食道癌、大腸癌に対して、 年間20例以上のESDを施行していること(柏市で多いのは癌センターに次いで、東京慈恵会医科大学付属柏病院と当院が年間50件以上となっています)、 外科が充実しており緊急手術の体制が整っていることなどの条件を満たした病院であることが条件となります。



当院内視鏡センターについて

内視鏡検査および治療件数の増加に対応し、2016年2月に開設しました。光源、スコープ、高周波装置、その他処置具すべて最新の設備を備えています。 もちろん、当院は「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層?離術認定施設」であり、2016年は食道・胃・大腸の早期がんに対して、54例のESDを施行し、 近隣医療機関からの紹介も増加しています。 「弘法筆を選ばす」と言いますが、内視鏡治療では、筆を選ばないと質の高い治療はできません。最新の設備であることは、 より小さな癌を発見し、速く正確に治療するための大切な条件です。 内視鏡センター開設後、2016年2月~8月の7か月で食道、胃、大腸合わせて34件のESDを施行し、このうち胃癌は13件でした。 術者が手術に集中できるように、術者1人に対して内視鏡技師の資格を持った看護師が3人~4人体制で、患者さんの沈静や循環動態などを診ながら、 人員に余裕をもって安全に手術を施行しています。

内視鏡による治療範囲が拡大に!

胃癌の原因のほとんどがピロリ菌です。ピロリ菌に感染することで、胃炎が進行していき、胃の粘膜が薄くなって萎縮していきます。 胃炎が進行して胃癌になりやすくなるため、70歳前後で胃癌が多くなってきます。ピロリ菌による胃炎で、胃の粘膜が薄くなっている個所から胃癌になっていきます。 まず、一番薄くなりやすいのが、胃の出口に近い前庭部と、小彎(しょうわん)で、胃癌のほとんどはこの前庭部と小彎にできます。 今まで、2㎝以内の粘膜内の胃癌が内視鏡治療の適応でしたが、来年から分化型であれば大きさによらず粘膜内の胃癌に対して適応となるようにガイドラインが改定予定であり、 治療範囲が広がっています。しかし、粘膜より深く癌が進行していると、リンパ節に癌が飛んでしまう可能性があるため、外科の手術が必要になります。 部位によりますが、2㎝前後の胃癌であれば、当院での治療時間は、30分ぐらいです。

経口と経鼻のどちらがいいのか?

内視鏡には口から入れる経口と、鼻から入れる経鼻内視鏡がありますが、経口の方が画質がよく、バリウムで精査となった方や、 慢性胃炎で胃粘膜の萎縮や炎症が強い方は、経口をお勧めします。当院では経鼻よりも、経口を希望される方が多いです。

静脈麻酔あり、なしのどちらがいいのか?

一度静脈麻酔なしで、検査を施行することをお勧めします。痛い検査ではありません。嘔吐反射がひどい、検査に対して緊張が強い、 若い(65歳以下)、静脈麻酔なしでは検査がつらかった方は、静脈麻酔ありをお勧めします。

胃カメラを受ける間隔は?

内視鏡的切除が可能な段階で、胃癌の早期診断を希望する場合は1年に1回が望ましいです。 特にピロリ菌に感染していた方、食道が気になる方(喫煙者)、症状のある方、胃の薬を飲んでいる方は、1年に1回の検査が望ましいです。

ピロリ菌は除菌した方がよいのか?

ピロリ菌を除菌することで、胃癌の発癌率を1/3に抑えることができます。またピロリ菌は、若いうちに除菌した方が効果が高いですし、胃潰瘍の発症を抑制することもできます。 昔は胃癌と言えば、胃を2/3~全て切除するような大きな手術が多かったのですが、今は早期であれば胃を切り取らずに内視鏡で切除することができるようになっています。 内視鏡検査を1年に1回は受けて、癌が大きくならないうちに、早期に見つけて治療してください。