ロコモティブシンドロームについて

講師:おおたかの森病院 整形外科 真壁 健太 医師

運動器とは?

運動器を構成するものは、骨、筋肉、関節(軟骨)で、筋肉と骨が連動し、脊髄から指令が下りてきて、いろいろな筋肉を動かすことができます。 また、背骨には脊椎とその間を埋める椎間板があります。 ロコモティブシンドロームは、運動器が障害されたことで、移動Locomotion機能が低下してしまった状態を表します。 ロコモの定義は、主に加齢による運動器障害のため、移動機能が低下した状態であり、進行すると介護が必要となるリスクが高くなります。



日本人の平均寿命と健康寿命

日本人の平均寿命は、男性で80.21歳、女性で86.61歳になりました。しかしながら、介護の必要なく健康に生活できる健康寿命は、 男性で70.42歳、女性で73.62歳です。つまり、平均寿命と健康寿命との差は、男性で約10歳、女性で約13歳あり、その間は介護が必要な年数となっています。 要支援・要介護の原因は、運動器の障害が25.0%でトップで、脳血管の障害が18.5%や認知症15.8%より多くなっています。 運動器の障害としては、骨折、関節系疾患、脊髄損傷などが含まれます。

ロコモはどのようにして起こるのか?

運動器の病気は、骨では骨粗鬆症やそれによって骨が脆弱になって起こる骨折があり、関節軟骨・椎間板では変形性関節症や変形性脊椎症があり、 筋肉や神経系には神経障害やサルコペニア(筋肉量が減少し、筋力または身体機能が低下した状態)があり、変形性脊椎症と神経障害が合わさった脊柱管狭窄症が挙げられます。 これによって、疼痛や関節可動域の制限、柔軟性の低下、姿勢変化、筋力低下、バランス能力低下などの症状が出てきて、移動機能の低下をもたらします。すると、 生活活動が制限され、社会活動が制限され、やがて要介護となってしまいます。 骨脆弱性骨折には、脊椎椎体骨折:圧迫骨折や、大腿骨頚部骨折があり、骨が弱くなっているため、外からの軽微な力(立っているより低い高さからの転倒など)でも発生します。 主に腰の骨の脊椎と大腿骨頚部が多く、ほかに腕(橈骨遠位部)、肩(上腕骨近位端)、膝(大腿骨下端)が多いです。 若い人は、柔道などで投げ飛ばされても、サッカーでお互いにぶつかっても骨は折れせん。しかし、お買い物やお散歩の途中で転んだだけでも折れてしまうのが, 骨粗鬆症による骨脆弱性骨折です。

高齢者の運動器障害の特徴

よくある病気が連鎖して複合し、組み合わさってしまうのが特徴です。 当院で受診した方ですが、初めは腰部脊柱管狭窄症で受診されていましたが、その後、転んでしまい、右側大腿骨頚部骨折を起こしました。 また転んで反対側を骨折し、手術を受けましたが、またも転んでしまい、今度は腿の骨を骨折して手術を受けました。それでも整形外科では手術して、 骨を専用のロッキングプレートで補助したり、人工膝関節置換術で人工の関節に変えたりすることで歩くことができるように治療しています。 このように、骨自体が弱っているため、次々と骨折が起きてしまいます。よくある病気が、筋力低下やバランス能力の低下を通じて連鎖し、 複合して移動能力を低下させてしまうのが特徴です。

よくある病気は、どれくらいよくあるのか?

骨粗鬆症の有病率は女性が多く、腰椎では70代で3割、80代で半分近くが、大腿骨頚部では70代で4割超、80代で6割の方がかかっています。 また、変形性腰椎症の有病率は男性が多く、50代から7割を超えています。変形性膝関節症の有病率は女性が多く、60代で6割を超えた方が診断されています。 これら骨粗鬆症、変形性腰椎症、変形性膝関節症が単体なのか、1人の方に複数発症しているのかという調査では、 男性の場合は70歳を超えると2つ以上が複合して発症している場合が多くなってきますが、女性では70歳を超えると2つ以上の病気が複合して発症している場合が増え、 80代ではほとんどとなっています。

運動器がどうなっていたら、ロコモか?

健康な状態でも運動習慣がない方、肥満または痩せ過ぎの方は要注意で、スポーツのやり過ぎなどによる痛みやだるさの放置も、活動量の低下を招きます。 このような運動器疾患の予兆を放置していると、さらに悪くなり、骨粗鬆症や変形性膝関節症や変形性腰椎症などが起きてしまいます。  この活動量が下がってしまう前の状態を、ロコモティブシンドロームとして意識して早い段階で対処していきましょう。 こんな症状、思い当たりませんか?

①片足立ちができない
②家の中でつまずいたり、滑ったりする
③階段を上がるのに手すりが必要
④掃除機をかけるなどのやや重い仕事が困難
⑤2㎏程度の買い物をして持ち帰るのが困難
⑥15分ぐらい続けて歩くことができない
⑦横断歩道を青信号で渡りきれない

このロコモチェックに1つでも当てはまる方は、ロコモの疑いがあります。

ロコモ度テストで、ロコモを測ろう!

  1. 立ち上がりテスト…足の筋力、40㎝の台に座って両足で立ち上がれたら、次に片脚で立ちができるか?次に30㎝、20㎝、10㎝の台でも試してみてください。 片脚で40㎝の台から立ち上がれる方は、軽い運動ができ、階段を手すりなしで登れる状態で、両脚で20㎝の台から立ち上げれる方は、平地で安定して歩くことができ、 階段は手すりなしで上がれる状態を反映しています。
  2. ステップテスト…2歩幅(㎝)÷身長(㎝)=2ステップ値(例:2歩幅210㎝÷身長158㎝=1.33)。膝を曲げ体を沈めながらの大股歩行できる方では、 2ステップ値は1.3以上となり、足でけりだしながらの大股歩行できる方では、2ステップ値は1.1以上となります。
  3. ロコモ25…1か月の間の体のどこかに痛みがあるか、普段の生活でベッドから立ち上がったり、服を着たりの困難度について、25項目の質問に5段階で回答します。 これは運動器に関わる身体生活状況を評価するテストで、0~100点のうち点数が低いほど良好となります。25点以上は、要支援状態です。

ロコモ度テストによるロコモ判定

専門医が運動機能の低下が始まっていると判断する段階:ロコモ1は、立ち上がりテストで40㎝の台から、片脚立ちがどちらか一方でもできない、 2ステップテストで1.3未満、ロコモ25で7点以上のいずれか1つでも当てはまる場合です。 次に、専門医が生活は自立しているが、移動機能低下が進行していると判断する段階:ロコモ度2は、両脚で20㎝の台から立ち上がることができない、 2ステップテストで1.1㎝未満、ロコモ25で16点以上のいずれか1つでも当てはまる場合です。

ロコモ度による対策

ロコモ度1は、移動機能低下が始まっており、加齢に伴って筋力やバランスが落ちてきている可能性があるので、ロコトレなどの運動を習慣づける必要があります。 また、十分なたんぱく質とカルシウムを含んだバランスの取れた食事を摂るように気を付けましょう。 ロコモ度2は、移動機能の低下が進行し、自立した生活ができなくなるリスクが高くなっている状態です。 特に痛みを伴う場合は、何らかの運動器疾患を発症している可能性があるので、整形外科専門医の受診をお勧めします。

ロコトレ:ロコモーショントレーニング

ロコトレとは、運動器の機能障害に対するトレーニングです。バランス訓練(開眼片脚立ち:目を開けた状態で片足で立つ、左右1分ずつ、1日3回)や、 筋力訓練(スクワット:足の筋力をつける、肩幅より広めに足を拡げて30度ずつに開き、お尻を後ろに引くように体を沈める。 膝が出ないように注意。5~6回繰り返し、1日3回)などがあります。ムリせずに継続しましょう。

ロコモ度対策:食生活はバランスよく!

1日3回の食事で、5大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく摂取しましょう。1週間の中でバランスを整えて、楽しく食べる工夫をしてください。 骨の健康には、カルシウム1日700~800㎎(牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜、海藻類、大豆製品など)、たんぱく質(肉、魚、牛乳、大豆など)、ビタミンD(魚、キノコ類 日光を浴びるなど)、ビタミンK(納豆、青菜など)が大切です。またカフェイン、塩分、リンの摂り過ぎに注意してください。 せっかく運動してもエネルギーが不足すると、?せて筋肉が減ってしまいます。筋力を高めるためには、たんぱく質をはじめ、炭水化物や脂質もしっかり摂っておく必要があります。 植物は動かずに成長できますが、動物は動かなければ成長できません。ロコモ対策はサプリや薬を飲む、マッサージや温めてもらうだけで、自ら動かなければ効果は少ないです。 今からでも、遅くありません。毎日コツコツと小さなことを積み重ねることが大切です。