脳ドック活用術

講師:おおたかの森病院 脳神経外科部長 内田 耕一 医師

脳ドックの目的

症状のない人を対象に、主にMRI、MRAによる画像検査などの一連の検査をすることで、未だ発症していない脳や脳血管の病気、 あるいはその危険因子を発見し、これらの病気の発症防止あるいは進行防止を目的としています。

脳ドックの意義:脳卒中の予防!

脳卒中は脳血管の障害で起こる疾患群です。脳卒中には、血管が詰まるタイプ(76%)があり、その中には一過性脳虚血発作5%、 アテローム血栓症脳梗塞24%、ラクナ梗塞23%、心原性脳塞栓症19%、その他の脳梗塞5%があります。 また、血管が切れるタイプ(23%)があり、脳出血17%、くも膜下出血6%(破裂脳動脈瘤が主な原因)です。



脳ドックの対象

脳ドックを積極的に受けていただきたいのは、中・高齢者で、脳卒中の家族歴・高血圧・肥満・喫煙・多量飲酒などの危険因子を有する ハイリスクの方にも、重点的に受診をお勧めします。 また、健保組合や共済組合などの保険者や、地方自治体との契約者は、脳ドックについて十分理解した上で受診してください。

脳ドックの検査項目

  1. 問診と診察(神経学的診察)⇒家族歴や脳卒中の既往をお聞きします。
  2. 体重測定(BMI)・血圧測定⇒肥満や高血圧の有無を調べます。
  3. 血液・尿・生化学検査⇒糖尿病や脂質異常症(高コレステロール血症)の有無を調べます。
  4. 心電図⇒心房細動の有無を調べます。
  5. 眼底検査⇒脳動脈硬化症の程度が分かります。
  6. 頚部血管超音波検査⇒頸動脈狭窄症の有無を調べます。
  7. MRI検査⇒無症候性脳梗塞、大脳白質病変や脳腫瘍の有無を調べます。
  8. MRA検査⇒未破裂脳動脈瘤や頭蓋内血管狭窄の有無を調べます。

MRIとMRAの違いは?

MR(Magnetic Resonance:磁気共鳴検査)は、磁場を利用した検査です。MRIのIはImagingで゛脳“の画像であり、 MRAのAはAngiographyで゛脳血管”の画像です。MRの利点は、レントゲン被爆がなく、脳の小さな病変や脳梗塞がよく分かることです。 欠点は、機械の値段が高く、検査時間が比較的長い、閉所恐怖症の方には向かない、子供や呼吸器をつけた重症患者さんには適さない、 ペースメーカーや金属が体内にある方には適さない、早期の出血は分かりにくい、骨は写らない等々です。 CT(Computed Tomography)はX線を利用した検査で、脳・頭蓋骨の画像を撮る時に有効です。CTの利点として、 機械の値段が比較的安い、検査時間が短い、検査時の圧迫感がない(閉所恐怖症でも大丈夫)などがあります。 欠点は、レントゲン被爆がある(6歳までのお子さんは特に要注意)、小さい病変の検出に劣る、早期・小さい・無症候性(隠れ)脳梗塞は よく分からない、造影剤を使わないと血管の画像ができない等々です。脳ドックには、あまり適していません。

脳疾患の予防だけではない脳ドックの意義

脳ドックを受診する方の大半は、脳に異常がないことを知ることに、脳ドックの意義を感じています。 脳動脈瘤が約3%、無症候性脳梗塞が10~20%の受診者に発見される可能性があります。脳ドックの結果説明に際しては、 病気の恐ろしさばかりを強調して、不安や恐怖ばかりをあおってはいけないと肝に命じています。

もし無症候性脳梗塞が見つかったら…

MRIなどの検査で脳梗塞がみられても症状がないものを、無症候性脳梗塞と言います。もし、無症候性脳梗塞が発見されたら、 将来の脳卒中発症リスクは4倍以上、認知症になるリスクは2倍以上です。しかし、高血圧や糖尿病などの基礎疾患の治療を行うことで、 脳卒中や認知症を予防することができます。 また、大脳白質病変(脳の慢性虚血性変化)も、脳卒中や認知症の危険因子となります。

脳ドックで何が分かるのか?

MRI検査することで分かるリスク、または病気は

  1. 無症候性脳梗塞(隠れ梗塞)・大脳白質病変(慢性虚血性変化)がないか分かります。
    ⇒症候性脳梗塞・脳出血・認知症のリスクが分かり、生活習慣指導(肥満・喫煙・運動)、もしくは 高血圧症・高脂血症・糖尿病等の服薬治療の必要性を判断できます。
  2. 脳萎縮の程度が分かります⇒アルツハイマー型認知病の有無が分かり、服薬治療へつながります。
  3. 無症候性脳腫瘍がないか分かります⇒経過観察・放射線治療(ガンマーナイフ)・手術等の選択肢があります。

MRA検査することで、

  1. 未破裂脳動脈瘤の有無が分かります⇒くも膜下出血のリスクを判断し、経過観察するか、コイル・手術による治療を行います。
  2. 頚部や脳血管の狭窄・閉塞がないか分かります ⇒脳梗塞のリスクを判断し、経過観察するか、服薬・ステント・手術等の治療を行います。

脳ドックを受けるときの大切なポイント

  1. 特に中年の方にお勧めです。老人の受診は慎重に、若い方は脳卒中になるリスクが高いと考えられる人は積極的に受診してください。
  2. 必ず、脳神経外科専門医の判定を仰いでください。
  3. 病気が見つかったら、あせらず慎重に方針を決めましょう。

受診病院を見極めるポイント

  1. 脳神経外科専門医がいる施設が良いでしょう(放射線科医の画像読影だけで結果を出していたり、 異常を見逃してしまうこともあるので注意しましょう)
  2. 高性能MR(1.5テスラー以上)を使用し、最新の画像解析ソフトを活用して診断している施設が良いでしょう。 オープンMRのメリットだけを誇張していることもあるので注意しましょう。
  3. 責任をもってアフターケアーできる施設が良いでしょう。疾病がみつかったら、治療のできる関連施設があることが望ましいでしょう。

脳ドック活用術のまとめ

中高年者や脳卒中の危険因子のある方に受診をお勧めします。脳卒中の予防が最大の目的です。 未破裂脳動脈瘤や無症候性脳梗塞が一定の割合で発見されます。脳ドック学会の基準に準じて、適切に脳ドックを行っている施設での受診をお勧めします。 脳ドックは、皆さまの爽やかな老後を応援しています。