足の動脈硬化症-閉塞性動脈硬化症の症状・治療について-

講師:おおたかの森病院 循環器内科長・心臓カテーテル室長 櫻井 将之 医師

動脈硬化の進展

動脈硬化は、中高年になってから起きるものだと信じている人が多いのですが、実は10歳前後から動脈硬化は徐々に進んで、 30歳ごろになるとまさに完成された動脈硬化が現れるようになります。一生付き合わねばならない血管の変化ですが、「危険因子」を避け、 食事、運動などに気を付ければ、予防でき、進行を食い止めることもまた可能です。

動脈硬化の原因

最近、動脈硬化の危険因子が分かってきました。高血圧・高脂血症・タバコが3大危険因子です、加えて乱れた食生活、低栄養、運動不足、喫煙、 飲酒、ストレス、慢性疲労、肥満、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、家族歴、男性、更年期、重労働などが動脈硬化の危険因子であり、生活習慣に大きく影響されます。 危険因子が2つ以上当てはまる方は、動脈硬化予備軍です。こうした原因が重なるほど、動脈硬化になるリスクが高くなるので、ご注意ください。



食生活の改善で動脈硬化は防げる!

動脈硬化の危険因子の多くは、生活習慣を見直すことで予防できます。食事のバランスに注意し、糖質・脂質のとり過ぎに気を付け、腹八分目にしましょう。 塩分のとり過ぎは、血圧を上昇させるので、1日7g以内にしましょう。脂肪分を多く摂取すると、体内に蓄積できない分が血液中を漂い、 血管に付着して血管の弾力性を失わせ硬くしてしまいます。また、付着たコレステロールで血管の中が細くなり血流が悪くなるため、特に動物性脂肪のとり過ぎに気を付けましょう。 また、運動不足は体内に老廃物が溜まって、血液がドロドロになる恐れがあり、ドロドロ血液も血管壁に付着して血管を硬くします。 運動は老廃物と血液中のコレステロールなどの脂肪分を燃焼して、ダイエット効果も期待できます。運動後は、欠かさず水分補給しましょう。 加えて、睡眠や休養をしっかりとりましょう。精神的・肉体的ストレスは血圧を上昇させ、偏食や嗜好品の多量摂取につながり、肥満や動脈硬化が要因となる病気の原因となります。 また、ストレスがたまるとホルモンによって血管が収縮して高血圧になります。高血圧状態で血管が硬くなると、血管が破裂する恐れがあり危険です。ストレスも運動で発散すると、ダイエットや血をきれいにする効果が見込めます。このほか、高血圧やアルコール、糖分の取り過ぎも動脈硬化の原因になります。 煙草を吸うと、ニコチンが体内に吸収され、血管を収縮させて、動脈硬化を促します。また、責任感が強く、几帳面で、 何かしないとイライラしてストレスが溜まりやすいタイプA型人間はストレスよる動脈硬化になりやすいので要注意です。自分に合ったリラックス法を見つけましょう。

動脈硬化性疾患

脳血管疾患には、一過性脳虚血発作、脳卒中(脳内出血、脳梗塞)、痴呆症があります。また、冠動脈疾患には、狭心症、急性冠動脈症候群があり、腎血管疾患として、 腎血管性高血圧、腎機能不全があり、下肢動脈疾患には間歇性跛行、重症下肢虚血があります。

足の動脈硬化症-閉塞性動脈硬化症(PAD)について

動脈硬化により、足や腕の動脈が狭くなり、完全に詰まってしまうことで、血液が末梢動脈に流れなくなり、様々な症状を引き起こします。 主な症状として、間歇性跛行があります。跛行とは足を引きずるという意味で、筋肉のだるさや痛み、こむら返りがあるが、10分ほど休憩すると軽減します。 この症状は腓腹部(ふくらはぎ)が多いですが、大腿部や殿部にも見られます。典型的な症状は、閉塞性動脈硬化症の患者の3分の1に生じます。 運動ができないくらい状態の悪い患者では見逃されてしまうことが多いです。間歇性跛行をきたす疾患には、腰部脊柱管狭窄症が76%で最も多く、 閉塞性動脈硬化症は13%で、ほかに合併症11%があります。 腰部脊柱管狭窄症とは、ある程度歩くと筋肉の痛みが発生し歩けなくなり、屈むような姿勢を取って休むと痛みがなくなり、また歩けるようになります。

重症下肢虚血(末期症状)CLI

間歇性跛行が重症化すると、安静時疼痛、潰瘍や壊疽を引き起こします。糖尿病性末梢神経障害や虚血性神経障害がある場合は、痛みはありません。 間歇性跛行をそのままにしておくと、足のしびれや痛みのため歩けなくなり、運動量が減り、血管の内皮機能が低下して動脈硬化の進行が早まり、 心筋梗塞や脳卒中を起こしやすく、5年死亡率は大腸癌よりも高くなります。

閉塞性動脈硬化症の危険因子と治療

危険因子としては、喫煙と糖尿病が最も強く、次いで年齢(65歳ぐらいから高い)、高血圧、炎症反応、腎機能不全などがあります。 また、虚血性心疾患の方のPAD有病率は24.6%でした。無症候性PADの方の4.7%が冠動脈疾患を、1.2%が脳動脈疾患を合併し、1.6%が両方を合併していました。 重症下肢虚血の方の治療には、薬物療法25%、一時切断術25%、血行再建術50%があります。治療1年後、回復25%、重症下肢虚血の持続25%、切断後生存30%、死亡25%でした。

閉塞性動脈硬化症の検査

検査としては、触診、ABI検査(上腕と足首の血圧の差を調べる)、血管エコー検査、CTまたはMR検査があります。 まずABI検査でスクリーニングを行い、異常値があれば血管エコー、CT、MRIを行います。基本的にカテーテルなどによる血管造影の検査は、治療の直前に行います。

間歇性跛行の治療

治療には、薬物療法と運動療法があります。抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を服用することで血管の狭窄の進行を抑制し、 運動することで側副血行路(主要な血管が閉塞した際に、新たに形成される血管の迂回路)の発育を促します。 しかし、少し長く歩けるようになるだけで、根本的な解決には至りません。 他にバイパス術(閉塞した血管の迂回路を人工血管を用いて形成する外科手術)と、カテーテル治療(バルーンやステントを用いた血管内治療)があります。 カテーテル治療は手首など上肢もしくは足の付け根の血管から、細いワイヤーを通して閉塞・狭窄部分までもっていって、 バルーン(風船)を膨らませて狭窄部分を拡げ、ステントという血管を拡げる金具を留置する方法です。 下肢に対するカテーテル治療は、近年増加傾向にあり、年間7万件(2010年調べ)になります。当院でも、55件(2016年)実施し、増加傾向です。

早めの治療が大切です!

動脈硬化の予防には、危険因子(高血圧、脂質異常症、タバコ、糖尿病、肥満など)の管理が大切です。 動脈硬化性疾患(脳、心臓、足、大血管など)はお互いに合併するので、注意しましょう。足の動脈硬化症である閉塞性動脈硬化症は軽症であっても、 経過が悪いので放っておかないで、早期発見、早期治療が大切です。