乳がんの治療 ~若年性乳がんについて~

講師:おおたかの森病院 外科 菊池 順子 医師

若年性乳がんとは

日本人女性で乳癌にかかる方は増えており、今や12人に1人が乳癌にかかっています。 乳癌の発症は30代後半から増え、40・50代に多いのですが、最近35歳未満で発症する乳癌である若年性乳癌について注目が集まっています。 若年性乳癌は乳癌全体の約2.7%にあたりますが、年間1,000人以上の方が罹患しています。 柏市では、30代からエコー検診を実施していますが、この時期 女性は出産・子育てや仕事が忙しく、自分のことを後回しにしてしまう傾向があり、 受診率も低いのが現状です。



若年性乳がんの特徴

35歳以上の乳癌に比べると・・・

  1. 検診を受ける機会が少ないため、検診での発見はわずか13%に過ぎません。残りの87%が自分で胸のしこりに気付いて受診され、乳癌であると診断されています。
  2. 自己触診でしこりを発見するのは難しいため、腫瘍径が2.1㎝以上の割合が多く、平均値も2.9㎝と明らかに大きいです。
  3. 早期といわれるStage0とⅠの割合は、35歳以上は80%なのに比べ35歳未満は40%と半分になっています。 逆に、リンパ節への転移や腫瘍径が大きいなどのSttageⅡとⅢの割合が多くなっています。病期Ⅰの10年生存率が93.5%と高いのに比べ、病期Ⅱでは83.5%、 病期Ⅲでは53.8%と下がってしまいます。
  4. 乳癌のタイプをホルモン受容体や、がん細胞の増殖能力が高いかどうかによって、5つのタイプに分類していますが、 その中でも悪性度が高く、予後不良のタイプが多いのが若年性乳癌の特徴です。また、妊娠・授乳期の乳癌は、それ以外の乳癌と比べ予後不良な場合が多く 、StageⅣ(遠隔転移あり)で見つかることも多いです。しかし、妊娠・授乳期であっても、Ⅰ期であれば10年生存率は90%と、予後も良好です。
  5. 35歳以上の乳癌に比べると・・・傾向として両側性乳癌(左右両方の胸に発症)は少なく、BMIが低い痩せている方が多いです。 また、乳癌の家族歴は若干多くなっています。

がん検診とは

対策型検診として、市町村などの住民検診がありますが、その目的は地域などにおけるがん死亡率の減少です。 公的資金を使用しているため、当然予算が決められており、効率を重んじています。 対して、任意型検診は人間ドックなど個人が希望して実施する検診で、全額自己負担となりますが、個人の死亡リスクを下げるのが目的です。 柏市の場合、乳がん検診は30~39歳の女性を対象に超音波検査を、40歳以上の女性にはマンモグラフィー検査を実施しています。 ただ、市町村によっては30歳代では検診がなかったり、40歳以上でもマンモグラフィーでは発見しにくいタイプのがんもあるので、 自分自身の発症リスクを考慮して、任意型の検診を組み入れていくことも大事だと考えます。

乳がんの症状

乳房に、しこりやえくぼ、乳頭のただれが現れます。乳頭からの血性分泌が見られることもあります。

自己視・触診のチェック項目と実施時期

上半身裸になり、大きな鏡の前でチェックしましょう。

  • 乳房の大きさが以前と変わっていないか?
  • 張りが強くなっていないか?
  • 皮膚の色は?
  • 「ひきつれ」「くぼみ」「ふくらみ」はないか?
  • 乳頭の「陥没」「歪み」「ただれ」はないか?

両手を同時に上げ下げすることで分かりやすくなります。
お風呂で洗いながらのチェックも有効です。
乳房と反対側の手に石鹸をつけて撫でるようにして調べます。

  • 「しこり」はないか?
  • 乳頭からの「異常分泌」はないか?

体位によって分かりやすくなる「しこり」もあるので、入浴時以外にベッドなどで横になった状態でも時々行うと、なお良いです。 また、チェックする時期としては、閉経前の方は月経終了後1週間くらいの間に行いましょう。閉経後の方は毎月日にちを決めて行うと良いです。

マンモグラフィー検査とデンスブレスト(高濃度乳腺)

市町村の検診で行うマンモグラフィーでは、両乳房1枚ずつの撮影をしています。 乳癌ができやすい脇近くと乳房全体を映すことができるという理由から乳房を斜めに挟んだ撮影法で行っていますが、 人間ドックでは、乳房を上下に挟む方法を合わせ、両乳房2枚ずつ撮影しています。 マンモグラフィーでは、乳腺の濃度によって、乳房を4つに分類しています。 年齢が進むと乳腺が脂肪に置き換わっていくため、黒っぽく映るようになります。 逆に、若い方は乳腺濃度が高いことが多く、マンモグラフィーで乳房全体が白く映ってしまうため、乳癌が見つけづらくなります。 この高濃度乳腺は、デンスブレストともいわれ、日本人を含む東洋人に多く、乳癌発がんリスクが高いのも特徴です。

乳がんの治療

細胞診や針生検での病理検査で乳癌と確定されたあと、実際の治療に入ります。

  1. 外科治療・・・全摘手術でも40年前まで主流だった胸筋まで切除する方法は、ほぼせず、乳房温存療法が主流となっています。 全乳癌患者さんの60%強を占める腋窩リンパ節に転移のない方への不必要な郭清を避けることができるセンチネルリンパ節生検など、低侵襲の治療が進んでいます。 (リンパ節郭清/がんの病巣と共に周囲にあるリンパ節も切除すること)最近では、術後の見た目を考え、乳房再建術を念頭に入れた乳房全摘術を希望する方も増えています。
  2. 放射線治療・・・以前は進行乳癌に対する治療が行われていましたが、現在では、部分切除後の残乳再発を予防する目的で多く行われています。
  3. 化学療法(抗がん剤)・・・点滴と飲み薬がありますが、どちらにしても、入院せず外来で治療が可能なので、患者さんのQOL(生活の質)を下げずに受けていただけます。
  4. ホルモン療法・・・女性ホルモンの影響を受けやすいタイプの場合に有用です。閉経前後により薬を変えます。最近では、10年服用の有用性が言われています。
  5. 分子標的治療薬・・・がんの遺伝子をターゲットにする薬なので抗がん剤に比べて副作用が少なく、よく効くお薬です。 再発のない術後、補助療法では、3週間おきに1年間ほど使用し、再発の場合も用いられている薬剤です。