外科医・栄養士が見る、要介護・寝たきりの予防とは?~知っていますか?サルコペニアとフレイル~

講師:おおたかの森病院 外科 田口 泰三 医師 / 栄養科主任 水鳥 祐子

はじめに

高齢者の場合、高齢者と異なり BMI(体格指数)が高い人より低い人のほうが、総死亡リスクが高くなるという結果が出ています。 ※ BMIの出し方= 体重kg÷(身長m×身長m) →18.5未満が低体重とされています。 つまり、高齢者の痩せ(虚弱)は総死亡リスクを高めてしまうのです。 そして、高齢者を取り巻く環境への懸念として、独居(一人暮らし)の高齢者の割合が増加しているということです。




 

独居による偏食や孤食、そして転倒やけがを起因とする活動量や運動量の低下などが問題となっています。 単なる寿命を延ばすだけでなく、「健康寿命」をいかに延ばしていくかが今後の課題です。

サルコペニアとは

2016年10月に、国際疾病分類第10版に登録された疾患です。 一般的に、健康な人であっても50歳以降は、毎年1~2%程度 筋肉量が減少するといわれていますが、 そういった加齢現象としての減少を超えて、極端に筋肉量が減少し、筋力が著しく低下した状態です。 その結果、握力や歩行速度が低下するなど、身体機能が損なわれ、ふらつきや転倒が起こりやすくなります。

【サルコペニアの有病率】
 男性 / 65~74歳 2.3% 75~84歳 15.3% 85歳~47.8%
 女性 / 65~74歳 5.0% 75~84歳 11.7% 85歳~6.1%
 ※国立長寿医療研究センター実施調査より

サルコペニアと疾患関連性

サルコペニアと関連性があると考えられる疾患
・糖尿病・動脈硬化・心不全・運動器疾患・骨粗鬆症・心房細動?認知症

【サルコペニア肥満】
筋肉の減少に体脂肪の増加(内臓肥満)が合併した病態をいい、一見肥満に見えなくても進行していることが あり注意が必要です。通常の肥満に比べ、高血圧や低体力になるリスクが高く、代謝異常や動脈硬化が進展し、 心血管リスクの上昇を招きやすいと考えられています。女性は、もともと筋肉量が少ないことからサルコペニア肥満に なる可能性が高いと言われています。

フレイルとは

年を取って心身の活力(筋力や認知機能・社会とのつながりなど)が低下した状態で、多くの人が健康な状態から、 このフレイルの段階を経て、要介護状態になると考えられています。

フレイルと疾患関連性

フレイルと関連性があると考えられる疾患 ・生活習慣病・認知症・心不全・骨粗鬆症や骨折・COPD・心房細動・外科手術後の合併症など

高齢者は、様々な慢性疾患を合併している場合が多く、フレイルにより合併疾患が悪化するだけでなく、フレイルの 進行を招く悪循環となります。また、フレイルは関連疾患の発症リスクを高めます。

サルコペニア・フレイルを予防するための食事と栄養について

ここからは、サルコペニア・フレイルの発症に重要なキーワードとなる筋肉量や筋力について、毎日の食事や摂取したい 栄養の部分から、お話しします。講師は、管理栄養士の水鳥主任です。

たんぱく質を摂りましょう!

たんぱく質はエネルギーとして消費されてしまうので、筋肉の合成に使う量が減ってしまいます。 また、高齢者は若年者と比べて、たんぱく質をつくる力が低下していると言われています。

■一般的な、たんぱく質必要量:1.06g/kg/日(適正体重当たり)
■サルコペニアの高齢者のたんぱく質必要量:1.2~1.5g/kg/日
適正体重は、身長(m)×身長(m)×22で算出できます。(参考:身長150㎝は50kg、160㎝は56kg)
★2017年度のサルコペニア診療ガイドラインでは、適正体重1㎏当り1.0g以上のたんぱく質摂取でサルコペニアの 発症予防に有効である可能性があると推奨されています。

バランスのよい食事を心掛けましょう!

サルコペニア・フレイルを予防する食事 7つのポイント

  1. 1日3食。欠食はしない。
  2. 肉か魚を1日2品、卵か豆腐を1日1品。
  3. 牛乳は1日コップ1杯(200ml)飲む。
  4. 主食、主菜、副菜をそろえましょう。
  5. 食欲がない時は分けてたべる。
  6. 噛む力を維持する為に定期的に歯や口の中の状態のチェックをしましょう。
  7. 会食の機会を作りましょう。孤食は避け誰かと食卓を囲む機会を持ちましょう。


最後に

【柏から全国へ】
東京大学高齢社会総合研究機構が柏市で行った「栄養とからだの健康増進調査」から得られた知見をもとに 「フレイル予防」の考え方とフレイルの兆候をチェックするプログラムが全国へ広がっています。

フレイル、サルコペニアはいずれも加齢とともに増加する病態であり、後期高齢者でその頻度が増加します。 フレイル、サルコペニアはいずれも自覚症状に乏しく、認知されにくいため、しばしば診断されずに病態が進行し、 要介護状態となってしまいます。 予防方法は、栄養療法と運動療法です。生活習慣病や食欲低下などのためにエネルギー摂取量の十分な確保が 妨げられていないかどうかを確認し、特に、タンパク質とビタミンDの摂取ができているかを確認することが必要です。 管理栄養士へのコンサルトが可能なケースでは積極的に管理栄養士を活用してください。  栄養指導とともに運動指導が重要であり、歩行などの有酸素運動に加えて、レジスタンス運動やバランストレーニングを併用することでより大きな効果が得られます。 要介護状態にならないように日ごろから介護予防を意識するようにしましょう。