医療コラム

大動脈コラム Vol.2「大動脈瘤を見つけるための検査」

大動脈瘤があると言われている方、知人・家族の大動脈瘤のことが心配な方へ

心臓血管外科 部長 市原 哲也

前回は、あっと言う間に命を奪う大動脈瘤についての認識を新たにしていただくようにという点に重きを置いて、お話ししました。 そして大動脈瘤の見つかり方は、“別件逮捕” つまり、別の病気について調べている最中に見つかることが多い、ともお話ししました。 しかし、この段階は、あくまで「疑い」です。今回は、大動脈瘤の診断や治療方法の選択のための、より詳しい検査についてご説明します。

主な検査は断層撮影、一般的に“CT”と呼ばれるものです。この検査には、腕から点滴をして薬剤を流しながら行うものと、 点滴なしで行うものとがありますが、どちらもベッドに横たわるだけで、数十秒から数分という短時間で終了します。 実際に検査の機械が動いて撮影している時間は、ほんの数秒です。そして検査終了後、数分すれば画像を見ることができ、 その場で評価することができます。患者さんにとっては、お腹や胸の超音波検査と同じくらい“優しい”検査であるといえます。

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【CT】

腕から点滴して流す薬剤を“造影剤”といい、これを使用したほうが詳しい情報が得られます。 胸背部痛で大動脈瘤破裂や解離が疑われた場合には、早急にこの検査を行いますが、ほぼ100%確実に診断ができます。 ただ、この造影剤検査には、ごく稀にアレルギー反応を起こす患者さんがいらっしゃるという欠点があります。しかし、それは、検査前の問診で未然に防ぐことが可能です。 そして、アレルギー体質の患者さんに対しては、MRI(磁気共鳴画像)検査を行います。 X線の被ばくなく、造影剤を使わずに、しかも、同等に精度の検査が可能ですが、欠点は「CTほど短時間でできない」、「閉所に数十分横たわる必要がある」ということでしょう。 約15分から20分かかりますので、緊急検査には不向きと言わざるを得ません。

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【MRI】

このように、大動脈瘤はCTだけで、ほぼ100%診断が可能です。 そして、大動脈瘤があると確定したら、次に大切なのは、瘤の場所・性状・大きさの把握です。 これにより、その時点で手術が必要かどうかを含め、ほんの数分で治療方針が決められるのです。緊急の場合には、なおのこと重宝します。

このように大動脈瘤は、その気になれば、すぐに見つけられるのです。そして、その場で正しい治療が始められます。 正しい治療というのは、何も手術だけではありません。その時点で手術の必要がなくても、将来必要になるかも知れないと、本人や家族が正しく認識することが大切なのです。 もちろん、ずっと手術せずに済めば、それに越したことはありません。 ですから、そのための内科的治療、主に血圧のコントロールをはじめとする生活習慣病の改善と、その継続の重要性についても十分ご理解いただき、 マネジメントしていく必要があります。

大動脈瘤の診断がついたら、薬の治療にせよ、手術にせよ、正しい治療が必要です。 次回は、なぜ必要なのかという点も含めて、大動脈瘤の治療について詳しくお話しします。

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